近年、社会の変化により継承者がいない、子どもたちに負担をかけたくないという理由からお墓の撤去を検討する人が増えています。しかし、多くの人がお墓の撤去にかかる具体的な費用が分からず、不安を感じているのが現状です。
この記事では、そうした不安を抱える人々に向けて、お墓の撤去にかかる費用の総額や内訳、手続きの方法などを詳しく解説しています。墓じまいをご検討の方は是非参考にしてみて下さい。
この記事を書いた人
立ち華葬祭 COO 高橋 哲彦
葬儀業界歴20年。その中で対応した葬儀の施行件数は3000件以上。
現在は川越市の葬儀社「立ち華葬祭」でCOO(最高執行責任者)として、お客様の理想の葬儀をお手伝いしております。そしてその専門知識や経験をもとに、川越市を中心とした方々に葬儀の役立つ情報をご提供しています。
墓じまいとは
『墓じまい』という言葉は最近よく耳にしますが、その具体的な内容について詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。さらに、お墓は家族で伝統的に守ってきた形式のものもあり、独断で決めるのは難しいかと思います。
ここでは墓じまいについての説明と、墓じまいをするメリット・デメリットについて説明します。まずは墓じまいについて一緒に知っていきましょう。
墓じまいとは
墓じまいとは、これまで家族や親族が管理していた墓地を撤去し、その土地を元の状態に戻すことを指します。理由はさまざまで、お墓の継承者がいない場合や、距離的・経済的な理由でお墓の維持が難しいと感じた場合などです。また、お墓に入る当人が終活の中で、家族の負担を軽減する方法として選ばれることもあります。
いずれにせよ墓じまいを検討する際には、家族や親族間での十分な話し合いが大切です。
墓じまいが増えている理由
お墓が遠方にあり、守るのが難しい
墓じまいを検討する方の中には、遠方にあるお墓の管理が難しいという理由を挙げる人が多いです。大学進学で地方を出たり、就職や結婚などで故郷を離れたりすることでお墓参りの頻度が減るため、お墓の維持が困難になってきているのです。
お墓参りが減少すると、掃除が行き届かず、周囲のお墓に迷惑をかけることが考えられるため、墓じまいを考える人が増えています。また、今お墓の購入を検討している人も、自宅からの距離を重要視している人が多く、お墓の維持管理には、アクセスの良さや手頃な価格が必須とも言えます。
高齢になって、お墓参りに行く体力がない
たとえお墓が近くにあっても、年を取るにつれてお墓参りに行く体力がなくなることがあります。以前は自分で運転してお墓を訪れていた人も、高齢になり運転免許を返納すると他の人に運転を頼む必要がある為、自由にお墓参りに行けなくなります。その結果、何年もお墓参りに行けていないという高齢者も少なくなく、このような状況から墓じまいを検討する年配の方が多いと言えます。
後継者がいない
墓じまいを考える主な理由に、夫婦で子供がいない場合や独身の場合もあります。お墓を継ぐ家族や親族がいないことで自分が亡くなった後の事を不安に感じる人が多いのです。もし、お墓を守る人がいなければ、墓じまいをして先祖の遺骨を適切に供養することも一つの選択肢に入れましょう。
時代による価値観の変化
時代による価値観の変化も墓じまいが増えている理由だと考えられます。かつてのお墓は一族の先祖を祀る重要な場所とされていましたが、時代による価値観の変化により、「家」や「先祖」への重視が変わり、現存するお墓をそのまま守ることに対する義務感が薄れてきているのです。
墓じまいのメリット・デメリット
メリット
墓じまいの主なメリットは、自分自身および継承者のお墓の維持管理に関する負担を軽減できることです。特に遠方にあるお墓の訪問が難しい場合、墓じまいは負担を減らす良い選択肢になります。さらに、墓地管理費の支払いが不要になることで、金銭的な負担も減るため、無縁仏の問題を防ぐことに繋がります。
デメリット
主なデメリットは、お墓の撤去に必要な費用が高いことであり、墓じまいの大きな問題点です。また、家族や親族、お寺との間でトラブルが生じる可能性もあるため、よく話し合ったうえで決定する必要があります。
墓じまいの手順
「墓じまいを検討はしているが何から始めたら良いかさっぱり分からない」そんな方も少なくないと思います。ここではそんな方に向けて事前の準備から、墓じまいをして新しい納骨先へ行くまでを3つのステップで解説していきます。
- 家族や親族とのコミュニケーション:墓じまいを始めるにあたって、最も大切なのが家族間での話し合い。後でトラブルにならないよう納得の結論が出るまで話し合いましょう。
- 遺骨を移す場所を決める:家族間で墓じまいすることが決まったら、新しい納骨先も探しましょう。
- 必要な書類を入手する:役所で墓石解体に関する許可書を貰い、記入・提出します。(5で説明)
- 開眼供養を行う:僧侶を呼んで開眼供養を行います。感謝の気持ちを忘れないようにしましょう
- 墓石を解体する:ここまできて墓石の解体が始まります。
- 新しい納骨先へ:墓石の解体が終わったら新しい納骨先へ故人様のお骨をお引越ししていきます。
納骨堂や散骨など様々な選択肢がありますので家族間でよく話し合って決まるとよいでしょう。
墓じまいにかかる費用
一言に墓じまいと言っても、墓石の撤去費用、行政手続き費用、遺骨の新しい納骨先へ移す費用など様々な要素が含まれています。ここでは日本の墓じまいの平均総額とその内訳についてみていきましょう。
日本全国での平均費用
お墓じまいの費用は平均して約30万円~300万円の範囲です。墓石の撤去だけであれば約20万円で可能ですが、法律で禁止されているため、遺骨の放置や廃棄はできません。したがって、行政手続きを経て新しい納骨先に遺骨を移す費用も、お墓じまいの総費用に含まれます。
お墓の撤去にかかる費用
23万円~50万円
行政手続きに関する費用
500円~1,500円
新しい納骨先に関する費用
8万円~260万円
総額の平均は30万円~300万円
費用の内訳
墓じまいを考える際に重要なのは、費用についての知識を持つことです。後悔しないためにも自分の予算に合わせてぴったりな墓じまいの方法を探していきましょう!墓じまいの費用は5つのカテゴリーに分けられます
お墓の解体費
お墓の撤去にかかる工事費は、お墓のサイズ、墓石の量、作業手法、使用する機材などに応じて異なります。将来の問題を避けるためにも、事前に費用の見積もりを取得することが重要です。
閉眼法要のお布施
墓じまいでは、お墓から遺骨を取り出す際に閉眼供養を通じて、僧侶が、魂を抜くことで墓石を単なる物体に戻します。また、法要時には僧侶にお経を上げてもらい感謝の意を表してお布施を渡します。お布施の額は固定されていないので、住職に相談することを推奨します。一般的には、永代供養料に相当する金額が参考にされることが多いです。
離檀料
墓じまいの際には、以前利用していたお寺から離檀料を求められることがあるので注意が必要です。各寺院にはそれぞれの規定があるため、事前に確認することをお勧めします。
新たな納骨先でかかる費用
新しい納骨所を確保する際には、墓地や納骨堂、永代供養墓への取得費用が発生します。さらに、移転先で僧侶にお布施をする必要がある場合もあります。通常の法要に準じた金額を準備するのが適切です。
墓じまい後の納骨先
墓じまいを行った後、最も重要なのは新しい納骨先を見つけることです。一言で納骨と言っても手元供養や散骨など手元供養や散骨など様々なタイプの納骨先があります。ここではそれぞれの納骨の仕方を詳しく見ていきます。ぜひ参考にしてください。
納骨先の種類と費用
納骨堂
平均費用91万円程
納骨堂は、寺院や霊園の建物の中に故人の遺骨を納めるタイプのお墓です。
骨壺でそのまま収蔵するのが墓石墓との大きな違いで、ロッカー型や自動搬送式といった様々なタイプがあります。お墓の承継者がいないという不安を抱えている方や子孫に負担をかけたくないと考えている方が納骨堂を選ぶ傾向にあります。
散骨
故人の遺骨を粉末状にし、海に還すのが海洋散骨です。遺族が船に同乗し、故人の遺骨を海に返す参加型散骨と業者が複数の遺骨を預かり、都合が良い日程でまとめて散骨する代行散骨の2種類があり、それぞれ料金が異なります。
樹木葬
平均費用71万円程
自然の中で埋葬する方法はすべて樹木葬と呼ばれます。もっとも一般的な樹木葬は墓石の代わりとなる木の周囲につくられた区画に遺骨を納める方法ですが、個別に墓碑をたて、その周りを花々で飾るガーデンタイプなどもあります。
共同墓地への納骨
平均費用2万円~5万円
共同墓地を選択する際は、費用の詳細を確認することが大切です。共同墓地での納骨には、埋葬料、永代使用料、管理料、永代供養料、刻字料が必要になります。一般的に、共同墓地での埋葬料は永代使用料や永代供養料と合算されることが多いです。自宅での保管
墓じまいの費用を抑えるコツ
墓じまいの費用は、安価で請け負ってくれる業者を探すことで抑えることができます。工事費は業者によって異なるので、事前に比較して選ぶことが重要です。また、遺骨は新しいお墓に納める代わりに、手元供養や散骨などの選択肢もあります。手元供養を選べば、お墓を訪れる必要がなくなるので遠方に住んでいた方は安心できるでしょう。
墓じまいに必要な手続き
改葬は、既存のお墓から遺骨を別の場所へ移動させることを指します。墓じまいを行い、遺骨を別の墓地に移す際には、改葬の手続きが必要になります。墓じまいの流れと手続きについて十分に理解し、それを踏まえて墓じまいを行うかどうかを検討しましょう。
書類
埋葬証明書
埋葬証明書(納骨証明書)は、現在のお墓の管理者から発行される書類で、通常自治体が用意します。公営霊園の場合は、市区町村が窓口になることもあります。
改葬許可書
改葬の際には、墓地がある自治体で「改葬許可申請書」を提出し、遺骨1体ごとに1枚が必要です。この申請書に現在の墓地管理者の印をもらい、受入れ許可証と共に役所に提出して「改葬許可証」を受け取ります。自治体によっては、埋葬証明書や新しい納骨場所の受入証明書の提出が求められることもあります。これらの書類は、現在と新しい墓地の管理者から発行されます。新しい墓地や墓石の準備は、これらの書類が必要な場合に先に行う必要があります。
受入証明書
改葬先の受け入れを証明する「受入証明書」は、新しい納骨先のお寺や霊園から発行されます。散骨や手元供養を行う際の手続き方法は、市区町村に埋葬証明書(埋葬証明書)を発行してもらう時に問い合わせると良いでしょう。自治体によっては、ホームページからフォーマットのダウンロードが可能であったり、引越し先で準備がされていることもあります。
提出方法
自治体へ改葬許可申請を行う
改葬手続きを進める際には、遺骨がある自治体に改葬許可申請書を提出します。提出された書類に不備がない場合、通常は約3日から1週間で「改葬許可申請書」が発行されます。手続き時に手数料が必要な場合は、この時に支払うことになります。
今の墓地管理者に改葬許可を提示する
改葬許可申請書を受け取ったら、遺骨がある現在の墓地管理者にその書類を提出します。改葬許可証を提示すれば、改葬が許可されたことが確認され、お墓の解体を始めることができます。この時点で、魂を抜く儀式が必要になるため、お寺に連絡して手配しましょう。
引っ越し先の墓地管理者に改葬許可を提示する
新しい場所に納骨を行う際には、改葬許可証が必要になります。納骨式の法事や魂を入れる儀式を行うため、事前に住職の手配をしておくことが重要です。
墓じまいで気を付けるべきこと
墓じまいを行った後に後悔しないよう、自分で進める際に注意すべき点があります。ここからは、手続きを開始する前に知っておくべき重要なポイントを説明していきます。これらの情報を把握しておくことで、墓じまいをよりスムーズに進めることができます。
家族と事前に相談する
墓じまいを検討する際、家族との事前相談は非常に重要です。全員の意見を聞き、全員が一致する意見にまとまった上でで墓じまいを進めると、スムーズに進めることができ、トラブルに発展するリスクも少なくなります。特に高齢の親族や親しい家族がいる場合は、お互いの考えを十分に伝える必要があります。
墓じまい後のトラブル
もし、墓じまいに関してトラブルに発展してしまった場合は、国民生活センターへ相談することもできます。1人で抱え込まずに専門家を頼ってみるのも良いでしょう。
墓石の解体前に行政手続きを済ませる
お墓の撤去や解体工事を行う前に、必要な手続きを完了させることが必須です。工事が終了した後は、通常、遺骨を新しい改葬先へ移送するか、自分で引き取ることになります。もし、改葬先が未決定の場合は工事後の手続きは進まないため、工事日の少なくとも1ヶ月前には自治体を訪れるか、ウェブサイトから申請書類を入手する必要があります。墓じまいをスムーズに進めるためには、事前の早めの行動が重要です。
まとめ
この記事では、墓じまいの費用や手順・手続き等について説明しました。これらの知識があれば、自分で墓じまいを行うのは難しくありません。親族や自治体、お墓の管理者と連携して手続きを進めていきましょう。墓じまいを検討するタイミングは人それぞれであるので、あなたに合ったタイミングで墓じまいをしていきましょう。
監修者
株式会社ルピナス 金子雄哉
全国の葬儀社を対象にしたコンサルティング及びマーケティング支援を行う、株式会社ルピナスの金子雄哉です。葬儀業界のデジタル化を推進し、より多くの人々が葬儀サービスを理解し、アクセスしやすくするための戦略を日々研究・提案しています。葬儀社の経営者様だけでなく、ご遺族様にとっても最良の葬儀が行えるよう、マーケティングの観点からサポートしております。